逃げ場のない悪口
昨日,本気で母を悲しませてしまった.
事件は7月29日,私の喉の調子が一日中悪かったという夕飯での会話から始まる.
夏は普段窓を開けっぱなしで寝るのだが,7月28日の夜はそれだけでは対処できないほど寝苦しく,耐えかねた母が窓を閉めエアコンをつけて寝床に入った.
それが何時の出来事かは知らないが,私が朝起きたらそうなっていた.
そして,朝目覚めると常に痰が引っかかるような不快感があった.
のどいてえなあと思いながらも一日を無事終え,7月29日の夕飯でそのことを報告したのだった.
「俺今日さ,一日中喉痛くてさ,たぶんエアコンつけっぱなしだったからだな」
「そっか…私が悪いの?」
やばい,いや,原因は確かに私がパンツとTシャツで寝たこととか暑さのあまり掛布団を剥いだ(かもしれない)こととか複数考えられるけど一番わかりやすい原因はそりゃあ正直エアコンでしょう.でもこの口調で返事をするとき,大体そのあとに続くのは論点ずらしの言い訳なんだ.俺は23年間の共同生活で学んだんだ.しかも論点ずらしの言い訳で大体俺のことを責めるんだ.それいま言う?ってことを言うんだこいつは,いや女ってやつは.
と思考したのもつかの間,想定外の想定内の言葉が母から繰り出された.
「あんたさ,窓開けっぱなしで外うるさいと切れるじゃん.あんたが切れるの私ほんと苦手なの,だからさ…」
ほれみろ,完全にそのパターンだ.
俺は窓開けっぱなしでうるせえ学生の笑い声に起こされてイライラしたことは確かにある.確かにその程度ならあるけど切れた記憶なんてない.あーこれは誓っていい.
母にとって「切れてる」のラインがどこにあるのかは分からないが,朝のうるさい声に対してうるせえとか黙れとか言った記憶は全くない.
ここで,母の論点ずらしと喉の調子が悪いことを俺のせいにしようとした母に対して,何かが決壊した俺は言ってしまった.
「あのさ,俺母さんの,っていうか女のそういうところ嫌いだわあ.何か自分のせいで相手を傷つけたんじゃないかとなると,違うこと持ち出して相手のせいにして自分は悪くないっていうのを暗に主張するじゃん?俺女のそういうとこ本当に気持ち悪いと思うし嫌い.あなたが俺の切れる姿が嫌いな以上に俺は女のそういうところが嫌い.こういう言い訳聞くたびに『ああ俺やっぱ女と生活すんの無理だわあ』ってなる.まずさ,俺が言いたかったのはエアコンつけて寝るとこういうこともあるからお互い気をつけようねって話だったんですけど.母さんは自分に非があることに気づくとすぐどっちが悪いかの話だと勘違いして俺のせいにしようとするじゃん.なんでそうなるん?なんで『ごめん,次から気を付ける』『いや,俺ものどの調子悪くなったのは初めてだししゃあない.そもそも半ズボン履くべきだったわ~.』っていう会話にならないん?そういうとこマジで無理.意味が分からん.」
論理の順序やそもそもの言ってる内容は異なるかもしれないが,大体こんなことを言った.もう完膚なきまでに悪態をつきたかったので,顔つきはものすごくにやけていたはずだし,かなりゆっくり目に言葉を吐いた.
すぐさま俺は正気に戻り「やばい,やりすぎた」と思った.
瞬間母は俺に対する感情を殺そうとしているのが伝わってきた.
「本当にごめん,言い過ぎた.本当にすいません.」
「いいの.もう話しかけないで.」
母は、今にも泣きそうな顔で,穏やかな声でいう.
「本当にごめんなさい.言い過ぎました.本当に後悔してます.」
「ごめん,本当にしゃべりたくない.」
7月29日はその後一言もしゃべらずに一日を終える.
何をすればいいかわからずスイーツを買ってきたが完全に無視.
今朝は「仕事?」「うん」の一言だけ交わした.
懺悔.私はこの記事を見るたびに心が締め付けられることだろう.
この記事を見るたびに心苦しくなる自分のままでいてほしいという希望と,
このような過ちを犯すことが二度とないようにという自戒を込めて.